心臓音のアーカイブ:世界中の人の心臓音を聴くことができる「図書館」
世界中で集めた77,000以上の心臓音を恒久保存
2010年7月19日、豊島・唐櫃地区の唐櫃八幡神社境内にある王子が浜に、クリスチャン・ボルタンスキーが手掛けたアート施設「心臓音のアーカイブ」が公開されました。
「心臓音のアーカイブ」は、「遠く離れた地に、世界中の人の心臓音を聴くことができる『図書館』をつくる」というコンセプトのもと、ボルタンスキーが2008年以降、世界中で集めた人々の心臓音を恒久的に保存し、それらの心臓音を聴くことができる小さな美術館です。
施設内には、録音された心臓音がインスタレーションとして展示されている「ハートルーム」、希望者の心臓音を採録する「レコーディングルーム」、世界中から集められた心臓音をパソコンで検索して聴くことができる「リスニングルーム」の3つの部屋で構成されています。
採録された心臓音は自身のメッセージとともにアーカイブ化され、作品の一部となります。「心臓音のアーカイブ」には、14ヵ国19ヵ所で録音された77,265件(2022年7月18日現在)の心臓音が登録されています。
当たり前ですが、心臓音の数だけ人の命があり、人生があり、一つとして同じものはありません。ハートルームで無数の心臓音に包まれていると、命の尊さ、儚さ、かけがえのなさに、自然と思いを巡らせていくことでしょう。
「心臓音のアーカイブ」を訪れる方の中には、亡くなったご家族やご友人の心臓音を聴くために、はるばる訪れてくださる方もいらっしゃいます。「ベネッセアートサイト直島 広報誌 2014年11月号」でも、3カ月前に亡くなったご主人の心臓音を聴くため、フランスから訪れた女性の方のエピソードをご紹介しています。
王子が浜は、豊島の唐櫃港から徒歩15分ほどの場所にあります。あえて港から離れたこの場所に施設が作られることになったのは、ボルタンスキーの要望からでした。
飛行機や電車、船を乗り継いだ上に、さらに歩いて美術館へ訪れるという道程に、ボルタンスキーは「巡礼」のイメージを重ねているといいます。
大切な人や自分自身の命について思いを巡らせながら、遠く離れた島の小さな美術館へと辿り着く――その道程そのものが、すでにボルタンスキーならではの特別な体験と言えるかもしれません。
お子さんへの思いを作品として登録
ボルタンスキーは、「心臓音のアーカイブ」で複数回にわたって心臓音を登録していました。同じように豊島にお住いの島民の方には、何度も心臓音を登録している方がいらっしゃいます。
豊島にお住いの秋井さんは、お子さんたちの成長の節目ごとに「心臓音のアーカイブ」に訪れ、メッセージとともに心臓音を登録されているそうです。心臓の音と一緒に、その時その時に感じるお子さんへの思いを作品として保存しているのかもしれません。
自分の小さい頃の心臓音を大人になって聞き返してみた時、一体どんなことを感じるのでしょうか。まるで未来の自分たちへ残したタイムカプセルのようです。
生きた証を作品の中に保存(アーカイブ)
「心臓音のアーカイブ」で録音した心臓音は、CDとブックレットをオリジナルBOXにおさめてお持ち帰りいただけます(登録料 1,570円)。豊島を訪れた際には、ご自身の生きた証を作品の中に残してみてはいかがでしょうか。